7.69シックスティナイン


どうにも官能的な響きのある数字の組み合わせだ。
ある試験を受けて落ちたときに、会社の連中に「スコアはいくつだった?」と聞かれて、
「69」
と正直に答えたら、とある男子社員はニヤリと笑い、

「君にぴったりの数字だね」

と言った。

 この言葉とその意味を初めて知ったのは中学2年のとき、地域の夏祭りで先輩や部活の仲間と公園でたむろしながら知っているエロ用語について教えあっているとき、ある先輩が図を書きながら教えてくれたときである。

私の崇拝するアラニス・モリセットというカナダ出身の女性アーティストは、Right Through You という曲の中で

”You took me out to wine dine 69 me,
and didn’t hear a damn word I said”

 

と歌い、私の実生活においては諸々の理由により、個人的にはできればしたくないことのひとつだ。

「1969年、東京大学は入試を中止した。ビートルズのメロディーが流れ、ローリング・ストーンズも最高のシングルを発表し、ヒッピーが愛と平和を訴えていた。僕は九州の西の端の、基地の町の高校3年生。その佐世保北高がバリケード封鎖された。やったのは・・・・・・もちろん、僕とその仲間たち。無垢だけど、爆発しそうなエネルギーでいっぱいの、明るくキケンな青春小説。」

(村上龍「69」単行本背表紙より)

本屋に行き、村上春樹の本を探していると、間違いなく村上龍の本にも遭遇する。私は大学時代に「ノルウェイの森」を読んでから、村上春樹ファンだ。とはいっても、本当の本好き、春樹好きの人に比べたら読んだ冊数はたかがしれているし、正確に内容を語れるのは「ノルウェイの森」「アンダーグラウンド」くらいしかないだろう。大体、「アンダーグラウンド」は小説じゃないし。ある程度、本を読んでいる人と話をし、私が春樹ファンだというと、かならず「龍は?」という話になる。

つい1ヶ月くらい前まで、私は「龍は数冊読んだけど、一切受け付けない。『限りなく透明に近いブルー』はなんとか読みきったけど途中からは大変苦痛だったし、『贅沢な失恋』という、いろんな作家のアンソロジー本に入っていた短編には句点がなく甚だ読みづらい上に(もちろん句点がないことに意味はあるのだが)内容にもイマイチついていけず、『コインロッカー・ベイビーズ』は上下巻あるうちの上巻半ばで挫折した。ここまで人を疲れさせるエネルギーがあるのだから、彼は非常に素晴らしい作家なのだろうとは思うが、私の好みではない。」と答えていたし、これが本音だった。
 だから、春樹の本を探しにいって龍の本をたまたま見てしまい、その中に「69」という、エロリストセンサーに簡単に引っかかるタイトルの本があっても、見向きもしなかったのだ。

先日、インターネットのニュースを見ていたら、ついに村上龍の「69」が映画化されるというニュースが出ていた。どうもこの小説の映画化については何度も話があったらしいのだが、作者本人が断ってきていて、今回の映画化はまさに「ついに」というものらしい。この本を読んだことのある方ならご存知だと思うが、これは村上龍本人の経験に基づいた小説で、映画においては私の大好きな妻夫木聡が主演するという。そのニュースの中で、まさに上記抜粋した背表紙のような内容だと書いてあり、これは私が今まで読んだ(読もうとした)村上龍の作品とはだいぶ違った趣向のものだと感じ、先日帰国した際に単行本を購入したのだ。

とはいっても、やはり私は持ち前の龍アレルギーを懸念して、なかなか本を開くことができなかった。ピンクの表紙にブルーの文字で69と書かれたその本は、「明日読もう、明日読もう」と思いながら、ずっと私のベッドの横に転がっていた。その当時、好きだったある男がその本を読んだことがあるそうで、確かに他の本と比べると趣向が違って、これはこれで面白いと言ったので、とりあえず手にとって読み始めた。「その当時、好きだったある男」なので、既に過去の男であることを強調しておきたい。

さて、結果的に、その男は虚言症気味の最低な輩ではあったが、とりあえず彼のコメントだけは正しかった。一度読み出したらもう止まらず、村上龍のエネルギーの爆発に心地良い衝撃を受けた。今まで敬遠して悪かった。この作品で妻夫木くんが主演する映画なら絶対にDVD購入決定だ。

ただでさえ楽しみの少ない毎日なのに、本を読み終わった今、また一つ楽しみが減ってしまった。しかし、この本は私の好きな本ベスト3に間違いなく入るだろう。「ノルウェイの森」も時間をおいて3回くらい読んで、そのたびに感じかたが違うが、きっとこの「69」も、時間をおいてまた読んでみたら違うように感じるだろう。450円くらいの本だったが、まさに私の財産だ。読まず嫌いしないで、とりあえず開いてみるものだ。中身は「無垢なエネルギー」の源だったのだから。

有名な作家の有名な作品なので、きっとお読みになった方はたくさんいらっしゃるだろう。この本を読んだことのある方、是非この本を読んだ感想を一緒に語らせていただきたい。まだ読んでいない方で興味をお持ちの方には貸し出しをするのでbassguitar@infoseek.jpまでお知らせいただくか、私に会ったときに直接お知らせいただきたい。価値観はそれぞれなので、この作品を読んで皆さんが同じように感じるとは思わないが、違った読み方をされた方からはどんな読み方をされたのかを伺いたいし、同じように心地よい衝撃を感じた方とはその感動をシェアさせてもらえたら、と思う。「69」普及活動だ。

(今日のBGM:”Burn”- Deep Purple)

Ciao.

ソフト練習後、睡眠前のソファで。

Nozomi