6.Y君の結婚
2週間ほど里帰りをした。今回の里帰りのメインイベントは友人Y君の結婚式である。Y君と私は、自称「国際エロリスト」として年がら年中「エロ」のすばらしさと平和を訴える活動をしてきた。具体的には、週末の夜中にチャットで「真面目」なエロトークをしたり、イケてるエロサイトをお互いに紹介するなどである。私がシンガポールに来たことで、エロリスト組織「エロ・カイダ」の海外支部ができたと一番喜んでくれたのは他でもないY君だった。そのY君が生涯の伴侶を持つという。伴侶のK子さんも、エロリストの活動に非常に積極的で、週末のエロミーティングにもしっかり参加してくれる。結婚式の招待状の隅に、「2次会ではしっかり乱れていってください。」と手書きで書いてあったことは言うまでもない。
さて、そのY君の結婚式に、私は参列できなかった。帰国の際の飛行機の中から具合が悪くなり、40度の熱にうなされて寝込んでいたのだ。式の前日、新郎のY君に電話をして「ちょっと、いけないかも。」と伝えると、「おぅ。まぁ、披露宴は来いや。おいしいもんがたくさんでるから。」と非常にのんきな回答をされた。翌日にも熱は下がらなかったが、結婚式が終わるくらいの時間にようやく支度を終えて家を出た。会場についたときは、披露宴の二度目のお色直しが終わったところだった。大幅な遅刻だったので、頼まれていたスピーチも、もうしなくていいかな、なんて思っていたら、司会のお姉さんがマイクをもって近づいてきて、「次、スピーチお願いします。」と言ってきた。どうやら、私のテーブルでは私の代わりに誰がスピーチをするかで、私が来るまで大揉めだったらしい。
私の拙いスピーチも、披露宴も無事終了し、宴は2次会へと場所を移した。本当は大いに乱れたかったところだが、何しろ薬漬けだったので、非常におとなしくしていた。その2次会の会場では、私が参列できなかった結婚式のビデオが流れていた。
式の会場は、披露宴とまったく同じところだったのだが、目黒にあるその隠れ家のような式場は小さなドーム型になっており、ガラス張りになっている素敵なところだった。その日は、まさに秋晴れの美しい天気で、日光がさんさんと差込んでいた。新郎がブーケを渡すと、新婦がそれを慎ましやかに受け取り、そのブーケの中から花を一輪取り出し、新郎の胸ポケットにさす。指輪の交換を前に、私は既に号泣だった。後輩たちに、「ちょっと、泣きすぎですよっ。」と注意されても、一度緩んだ涙腺はそう簡単に元には戻らない。クライマックスの指輪の交換で私のマスカラの落ち具合もクライマックスだったが、2次会の幹事さんに「乾杯の音頭をお願いします。」といわれてすっかり立ち直った。
私には、結婚願望というものがほとんどない。両親の喧嘩をよく見て育ったせいかもしれないし、もっと遊んで暮らしたいわ、という思いからかもしれない。別に、結婚や、結婚している人を否定しているわけではないのだ。ただ単に、「私は」あんまりしたくないというだけの話で。男性に対する独占欲が異常に強い割には、結婚願望は皆無に近いのだ。一緒に暮らすのはいいが、たかが、されど紙切れにサインするのだけは嫌なのだ。
私の大好きな海外ドラマで「Sex and the City」というものがあるが、このドラマのあるエピソードの中で、主人公の女性が恋人のバッグの中から、自分に渡されるであろう婚約指輪を発見してしまい、拒絶反応で嘔吐してしまうというシーンがある。痛いほどその思いが分かると同時に、私なら嘔吐ではなくて吐血だろうとすら思うのだ。
Y君の結婚式を見て涙したのは、彼らの勇気に感動したからだ。私の価値観でいけば、男女の関係は非常に流動的なものだ。それに法的な拘束力を与え、多くの人の前で互いの生涯の伴侶となることを誓うということは大変な勇気がいることだと私は思う。これは嫌味でも皮肉でもなく、心からそう思うのだ。それと同時に、男性との関係そのものを信用できず、また男性から信用されると負担を感じる私の価値観は非常に幼いものなのかもしれないとさえ思った。本当は、何に対してもある程度の理想を抱いていないと、より良いものは得られないと理屈では分かっているのだが、男女の関係に関しては、今のところ完全に諦めモードだ。今まではそれを正当化していたが、Y君夫妻の姿を見て、少しだけ自分の価値観を揺るがされた気がする。
とはいうものの、私は基本的には相変わらずだ。Y君夫妻と、今月結婚するまた別の友人の幸せを心から祈りながらも、私はあえて強くなろうともせず、誰かと強く結びつきたいと真の意味で感じられるようになる日がくるのをただ待つのみ。まだまだ子供なんだろう。
結婚しても、国際エロリストの活動は続けるといったY君と、今夜も「真面目な」エロミーティングだ。友情は永遠でしょう。
(今日のBGM:”It’s My Life”-Bon Jovi)
Ciao.
遅く起きた土曜日に。
Nozomi